セイヨウキヅタ(ウコギ科)Hedera helix L.

 もう20年以上も前のこと、アパートの一室で大事に何種類かの鉢植えを育てていた。どれも充分な日光に当たることなかったけれど華奢な美しさがあり、斑入りのアイビーもその中のひとつだった。どの植物もなかなか大きくならず、朝に夕にはらはらしながら育てていた。

 そんな生活の中、たっぷりの太陽と子供が遊べる土が欲しくてたまらず、念願かなってお引っ越し。それは、まだ寒さの残る3月の始めで、大移動の翌日に雪が降った。新居にはまだカーテンもないどさくさの中、頼んであったジャーマンシェパードの赤ん坊まで加わって、てんやわんやの大騒ぎ、このアイビーが生き延びたのが不思議なくらいだった。

 それなのに、日当たりの良い居間に移されたのが良かったのか、あるいは忘れられるくらいが良かったのか、いつのまにか鉢の回りを囲むほどつるが伸びていた。家のぐるりを囲むブロック塀は犬を放し飼いにするためで、家主とて美的にも環境面でも良いとは決して思ってはいなかったから、生長を始めたこのアイビーをみてジッとしてはいられなかった。
 少しでも伸びると、土のあるかないかの隙間にちょこちょこと挿していったから、親元の鉢はいつもハゲチョロケで申し訳ないほどだった。そして5年程経つと、根付いたツタはみるみる逞しく変身をはじめ、やがて根元が木化してきた。そして今度は、育てた方が脅かされるまでの勢いとなった。

 ツルは塀を登って上まで届くと、そこから内側に向かう。暢気な私達はこれで内側に回ってくれたらうまいこと見苦しい塀を内側からも隠してくれると思っていたのだ。ところがどっこい、ツタが下に向かって伸びるはずがない。植木に絡み付いてとぐろを巻くと、再びそこから、どんどこ登っていってしまう。

 そんなわけで、6月から7月の勢いの良いときにぐるりと刈り揃えるのを怠ると、それはそれはびどいことになる。以来、年に2度の刈り込みが年中行事となった。最初に刈り込み、次にクマデで枯れ葉を引っ掻き落とし、ゴミ袋に詰めていく。ブロック塀の2面をひとまわりするのに朝2時間の作業で3日は掛かる。

 ツタは「絡む」というので嫌う人がいて、全部剥ぎ取るように勧めてくれたことも何度かあった。でも、夏の焼け付く陽射しやアスファルトの照り返しをどんなにか吸いとてくれていることか。

 当時の華奢な姿など、今は面影もないキズタさん、私と良く似てもいるのよね。 [2000. 7. 8]

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1年に3回は刈っていたアイビー今年は9月の半ばを過ぎてから刈った。それでもなんとかなる程度の生長ぶりになてきたから。塀の内側はまだ刈っていない。昨年までは木に登りはじめてどうしようもなく、慌てて刈ったほどなのに。楽になった。[2001.10.5]