キンモクセイ(モクセイ科)Osmanthus aurantiacus (Makino) Nakai

 

  私は香りのある木に引かれる。この花の匂いが嫌という人もいるけれど私は酔ってしまう。それにこの星のような花。  都心に住んでいて子供達がまだほんの小さかった頃、散歩道にこの花びらが落ちて一面 に広がっているところがあった。

「星が落ちているよ」と言って小さな指でひとつひとつ拾って集めて持ち帰ったっけ。きれいな星だけれども土と混じって、手のひらに集まった物は地面 に落ちているものほどきれいでない。それでも、集めることで満足し、上機嫌で家路につく。そんな子供達をみながら、いつか自分の庭が持てたらきっとこの木を植えようと思った。

 念願かなって庭を持てた頃、驚いたことに、私の住む市の木が木犀で、誕生記念に苗木を分けてくれるという。車もなかった私達は自転車でなんとか幼木を運んで持ち帰り、大喜びで植えた。まだ木に対する知識もなく、百科事典を紐解く心のゆとりもないまま。  

それでも、記念樹は順調に育ち、香り付きの星は毎年私達親子を喜ばせてくれた。だが数年後、どうも葉の色が良くない。しだいに花付きが悪くなり枯れてしまった。  泣く泣く掘り起こしてみると、根がほとんど張っていなかった。これが、整地をしていない悲しさを実感した始めである。

 ぎりぎりの予算で家を建てたために、分っていても整地まで手が回らず、この家の庭には以前の家の土台がそのまま残っているのだ。木を植えるときはできるだけ掘り起こすのだが、まずつるはしがいる。大きな石がごろごろならまだしも、固まってしまう砂利がびっしりはいっていたり、セメントでしっかり固められていたりする。ただ木をうえるためだけに30分は穴掘りに掛かるのである。ひどい時はもっとかかる。

 だから、今までの木は土台に阻まれて根を伸ばせなかったのだ。可哀相に、ごめんね。  そして今、2代目の金木犀は、お日様が好きということを知らずに植えてしまっていた。植木屋さんに去年移動してもらい、なんとか元気に育っている。

 よちよち歩きの子供達が成人した今、星の贈り物を心待ちにしているのはこの私となってしまった。[2000.10.11]
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さあ、今年も咲きました。なんとか根付いて、きっと来年はもっと見ごたえのある大きさになるでしょう。左に柿の木、右にはミカンとカラタネオガタマ。ここら一帯は常緑になってしまったけれど、手前には落葉のケムリノキが2本あります。 [2001.10.4]