<番外編>「甘え一考」

 

 先日こんなことを耳にした。竹久夢二の作品は日本では人気があるが、アメリカやヨーロッパでは、あまり注目されない。なぜなら、華奢で自己主張を感じさせない弱い女は魅力的と受け止められないから。

 そう言えば「可愛い子ちゃん」のように媚びを売る女の子もアメリカ人には少ないように思える。早熟という見方もできるが、私の知っている北欧人もアメリカ人も、全般に早くから自己主張が明確である。だから、「アメリカ人の女性は可愛いくない、日本の女性がいい」とおっしゃる男性もでてくるのだが。

 私の場合は、幸か不幸か「可愛い子ちゃん」などと扱われることが少なかったので、「今に見ていろ、可愛い子ちゃんだって、すぐにしわくちゃになるんだ!その時が勝負時」などと、焼きもちを励みに置き換えて歯を食いしばって思春期を生きていた。それでも、番茶も出花で、まれに可愛い子ちゃん扱いを受けることはあった。そうすると、「あんた達、あと数年もすれば私なんか見向きもしなくなるんでしょ!」と逆に腹が立った。

 だから、私は甘えの少ない精神的に自立している女だと思って生きてきた。ところが、先日こんなことがあった。嫌なことがあったのだ。腹の立つことがあったのだ。それがふたつ重なって、力の抜けたようによろよろとふとんの中に潜り込んで泣いた。次から次へと涙がでる。もちろん自分に落ち度もあってのこと、百パーセント相手が悪いなんてことはない。泣き寝入りした後、避けて通れないその出来事を思うと震えがきた。嫌だ嫌だの気持ちばかりで、心臓の動悸が激しくなった。幸い、家族がいるので、話をしていると気が紛れる、が、自分の置かれた現実に戻ると、また動悸が始まった。

 私は、あまり愚痴を言わない。だから友達に「ね〜どうしたら良いかしら?」などと相談することもほとんどない。知識や経験に基づく助言を求めたり相談することはしばしばだが、悩みに関しては至って心の整理の上手な方である。その私が一体どうしたことだろう。やるせなくて、友達に電話をした。すると、しょっぱなから、「あんた更年期よ、更年期!結構長く続くのよ〜!」その後、「同じ土俵で相撲をとろうと思ったらだめよ!」もう、これで一件落着であった。

 ころんで擦りむいて、這いつくばって泣いている私に、後ろから友がこう声を掛けてくれたので、私はひとまず起き上がることができた。そしてとりあえず、嫌なことを忘れて別の事をして一日を過ごした。

 自分を立て直すゆとりが得られたお陰で分かったことは、要するに自分は甘えていたのだということである。避けて通れない道なら、真直ぐ歩いてきたではないか!「なんとか逃げたい、こんなこと止めたい」と思ったりしたから、それに体が反応していただけの事。「逃げよう逃げたい」という甘えがあった。

 大きな大きな修羅を潜って生きてきた私には、健康な家族がある限り、恐いものなどありゃしない。可愛くない女で大いに結構!