庭日誌 August 前半|後半 最初のページに戻る戻る

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19日

 昨日から雨。台風の接近で恵みの雨になった。ぼんやり雨の庭を眺める。雨が止んだらしなければいけないことが頭に浮かぶ。
 8月に入って急に蚊が増えた。一旦庭に出ると、一緒に蚊まで室内についてくる。 「ドラキュラ」の襲撃におびえてばかりもいられない。そろそろ蚊取り線香の「松明」をかかげて庭に出陣しなければならなくなっている。塀のアイビーで郵便受けから新聞を取り出すのが難しいくなっているし、裏門はアイビーの暖簾になって、手でかき分けて通行するようになってしまった。

 とにかく今日は庭に出られない。熱があって、公然と学校を休めた時のことを思い出す。学校は楽しくもあるのだが、何故だろう?休めると嬉しかった。浮き浮きと登校したのは、好きな男の子がいた、ほんの数カ月の間だけだった。受験も終わり、進学先が決り、卒業を間近に控えた中学3年生の最後の数カ月だけ。
 何を話しているんだろう?そうそう、庭が好きだけれど、時には出たくない時もあるということを言いたかった。仕事に疲れても庭に出られないから、自然と室内の植物に目が行く。友達の頂き物だったのを、私が引き取ったシンビジウム。葉がどうもきれいじゃない。どうやらダニにやられたらしい。ふたは鉢とも、物置きに運んで、薬を噴霧し、数時間してから、お風呂場でシャワーをかけた。四方八方、上からも下からも。 いくらか艶がよくなったような気がするが、どうなるだろうか。
  デンドロビウムはあちこち向いている。支えを付けて縛るのは好きじゃないのだが、花が付くと内側に向かって咲いたりするので、割り箸を何本もさしてそれに結びつけた。もっと早くやってあげれば良かったのに。もう、茎が曲がってしまっている。腰の曲がったおばあさんを無理矢理真直ぐにしているような、そんな気分になった。

 碌な例えがでてこない。きっと、精神状態が良くないのだろう。 あしたはきっと晴れるから、庭に出よう。

21日

 昨日は、台風が房総の下を通り抜けていき、一緒に夏を持って行ってしまったかのように、涼しい日になった。巻き返しというのだろうか、強い北風が一日中吹き続けた。そうなると、萎えていた体が自然と動きだし、朝食後すぐに庭に出た。恥ずかしながら、四季なりイチゴは葉焼けをして見苦しい。つくづくおめでたい私だと思う。娘のところに幾鉢もかつぎこんで、孫の離乳食にちょうど言いから、などといい加減もいところ。枯らせて申し訳無さそうに連絡してきた娘はいい迷惑をこおむったものだ。ま、とにかく、上の左写真の中央下部にあったイチゴを抜き取ってフウチソウ3鉢を草むらのなかから引き出して置いてみた。まだ見える空間は、今朝、アケボノアシなどで埋めた。鉢物を埋めておくと、こんなときにとても便利である。近くで見ると鉢が見えてしまうのだが、ちょっと離れれば気にならない。アサギリソウは切り詰め、ニューサイランの枯れた葉を切り取った。左写真の右端を拡大したものが右の写真。メドーセージ、2度咲きのキキョウ、マツムシソウ(黄色に押されて紫は虫の息)、ヘリクリサムそしてその後ろがサンンゴミズキ。このあたりには、もうすぐホトトギスが群れをなして咲き始めるだろう。シマススキは、端の方が倒れてしまったので、支えをする。そろそろ咲き始めてもいい頃なのだが、兆しが見えない。

 最後に、裏に廻って、少し草むしりをした。ヒメシバというのだろうか、節から根を出してどんどんはびこる。しかも抜きにくい。いつも思うのだが、もしもヒメシバとカタバミを抜く人が居なければ、日本全土がこのふたつで覆われてしまうのではないか、と感じるくらいに生命力がある。

 今日は、窮屈そうに見える鉢植を、ひとまわり大きな鉢に移してやった。「もう少し待てばいいのに」ともう一人の私の声が聞こえるのだが、「わかっちゃいるけど」と聞く耳をもたない私が動く。球根ゼラニウムは、買ってすぐにひっくりかえしてしまった。そのせいか、今ある茎はほとんど枯れて来、根元から新葉がどんどんでてきている。安定のよい鉢に植え変える。咲かずのハイビスカス アセトセラは、ひとまわり大きな鉢にいれて、もう室内に入れちゃった。今年伸びた蔓がふらふらしていたブラックベリーはこれでやっと絡む場を得て落ち着いた。2メートルを越えて西花壇で暴れ廻っているアキチョウジは蕾みの気配もない。どうしよう....。

 面白くないことがある。ピーマンである。黄色と赤のピーマンが成るはずだった。高かったのに、思いきって買ったのに、緑のつややかな実を実らせ続けている。昨年に続いて同じことが起きた。一体どうなっているのだろうか?肉厚で美味しいことは美味しいのだが、面白くない!

24日

 昨日のこと、ベランダのイチゴの苗に水をやっていたら、根元にアブラムシが付いている。とんと見かけなくなったテントウ虫は呼ぶ術(すべ)もなく、必殺兵器を噴霧することにした。

材料1:昨年作った「ニンニクの焼酎漬け」;飴色になっている。
材料2:昨年作った「トウガラシの 焼酎漬け」;毒々しい色になっている。

 コーヒーを入れる時の要領で、ふたつの材料を漉し、そこに木酢液を混ぜてできあがり。これを5倍ほどに薄めて噴霧した。もちろんビンには大きくラベルを貼った。「トウガラシ・ニンニク・木酢混合液」 そして、今朝....。

 ネグンドカエデの葉が茶色くなり、イチゴの若葉が萎れ、まだアブラムシがい動いている!そんなのないよ〜。どれも、昨年どこかで読んだ自然にやさしくて殺虫効果のあるものだったのに。落ちこんでばかりいられないので、小さくなった石鹸を水に漬けてその液をイチゴに掛けた。それにしても、害虫は手で取るのが一番確実のようだ。

 雨上がりで、涼しい。秋の虫がたくさん鳴き出している。雨降りの日、雨足が弱ってきて、蝉が鳴き出すと、間もなく雨が上がることが多い。蝉の声がしない今日の天気は、一日雨かな。

26日

こんな可愛い花が咲いた!6月の始めに咲いたRhodantheだと思ったけれど、違う!日射しが強くて色が白けて写ってしまったが、実物はもっと濃くて素晴らしい色。なんとか種がとれると良いのだが....。きっとKさんい頂いた種の中からひょんと咲きだしたのだろうが、はて、なんだろう。素敵だな。(早速Kさんからの返事。これは苗でいただいたもので、エゾギクCallistephus chinensis 本には、夏の暑さに弱いとある。)

 日中の温度は31度というけれど、乾燥しているのだろうか、秋の暑さは冷房を必要としない。日焼けを心配して帽子を部屋中のあちこちに置いているけれど、たいていはほんの数分のつもりで庭に出るから、いらないと考える。そしてそのまま数十分過ごす。

 その度に思い出すのが、吉行淳之介のエッセイにあった話。女の人の中には、若い頃色が黒くて次第に白くなっていく人と、その逆がいるそうだ。前者は「良い女」で後者はそうでないとか。良い女の基準がなんであったかは、忘れたが(無視したいのか?)私は後者に属する。小学校に入学した時、母が、新しい担任に聞かれたそうだ。「お宅のお子さんはどこかお悪いのですか。あまりに青白い顔色なので」と聞かれたそうだ。そして、母が良く繰り替えした言葉が、今だに耳にこびり着いている。「色白は七難隠すんだからね」。彼女は、オカチメンコの私を元気づけようとしたのか、あるいは自分が色黒なので、色白の娘が生まれて嬉しかったのか。当時も今も、そんなことにこだわるのは嫌だなと思っている。私は肌の色なんて個性だと確信しているから。でも、地色でなく、日焼けでできた肌色は、シミの延長なので良くないようには思っている。

 K さんに頂戴したテイカカズラが新芽を出し始めた。やっと根付いたらしい。このまま大事に育てて、来春にでも友達の家の北側に植えてあげよう。蔓が吸着根で這い上がり、4メートル程伸びてくれれば、殺風景なバルコニーが覆われる。白い清楚な花が咲いたら、どんなにきれいだろうと思うのだが、暖地でなく日当たりも悪いと花は期待できないかも知れない。蔓は何メートルくらいまで伸びるのだろうか?

 昨年の春に植木屋さんに貰ったビナンカズラは、細い支柱には絡まるのだが、木の幹にはまるで興味を示さない。丸坊主のカイズカイブキの幹に絡ませようとの目論みはみごと外れた。仕方がないから、麻ひもで幹に縛り付ける。

 雑草が風景の一部になるのは真夏だけ、茂りすぎて夏の疲れを感じさせるので、そろそろ抜きはじめなくては。

30日

 いたいた、見〜つけた!ここの所、クチナシの葉が少しずつ食われているのが分かっていたのだが、犯人が見当たらなかった。今朝、写真の幼虫2匹と卵を4つ見つけた。アゲハだと思ったのだが、ツノと脇腹の斑点から、スズメガらしい。アゲハの幼虫を育てているYさんに大急ぎで連絡したけれど、空振りだったみたい。Yさん、お騒がせしてすみませんでした!気前よくたくさんの葉を付けてビンに入れたけれど、処分しなければ....。神様お許しを.....。アリどころか、こうして害虫殺戮しているのだから、とうてい天国には召されまい。孫に「蜘蛛の糸」を読んで聞かせる時には何としょう?はて、娘達の時にはどんな風に説明したのか...?パチンと蚊を潰しながら読んで聞かせたのかも知れない。

 蚊といえば、今月中ごろになって増えて来た。時々家の中まで入ってくる。我が家は予算の都合もあって、窓に網戸がない。それで、時折、一匹が汗ばんだ私の廻りで、羽音をたててしつこくまとわりつくことがある。じいっと動かずに、敵が体のどこかに止まるのを待ち、針を刺した瞬間にパチンとつぶす。だが、この作戦が、うまく行くとは限らない。息を殺して敵の動きを見ていると、敵がそれを察するかのようで、なかなか静止しない。これでもかこれでもかと私を焦らし始め、根較べとなる。

 仕事を中断して、蚊と対峙していると、昔々のことを思い出す。

  子供の頃、夏になると、母は重い蚊帳を押し入れの奥から取り出した。きちんと畳んであるので、順繰りに4角を鴨居に引っ掛け、あとから間の数カ所も吊る。当然、蚊帳の中は暑くなるが、家族が一つ囲いの中に寄り添って眠るのが満更でもなかった。初日には、きまって母の説明があった。「中に入る時には縁を持って振るのよ。当たりにいる蚊を追い払って、さっと滑り込むようにね。外に出る時も同じ。」ところが、どうしても数匹が中に入ってしまうことがある。蚊の方では、閉じ込められたことになるので、そこに居る餌食に食らい付く。こうなると、まず狙われるのが、小さな妹たちになる。だから、耳もとで羽音がすると、母はガバッと跳ね起きて、電気のひもを探りはじめる。やっと明かりが付くと、ハンティングが始まる。無言で全神経を蚊の動きに集中させる。無駄にパチパチつぶそうとする音をたてると、蚊の警戒心をあおるので、一発必中の覚悟で構える。私はあの時が楽しかった。幼い妹達を守ろうと、母ち同じ目的に向かって協力体勢にいるのが嬉しかった。だから、私が一匹を仕留めた時などは、もう、ちょっとした英雄気取りだった。なかなつかまらない時には、上官から様々な指示が下る。「もう血を吸っているから、高く飛べないはずよ。きっと低空飛行をしているはずよ!」「敵は1匹じゃないわ、2匹よ。油断しちゃだめよ!」真夜中のパジャマ戦士は、いっぱしの気分だった。長い間の緊張の末、守備よく敵を射止めると、 両手に赤黒い血がたくさんつくことがある。すると、「まあ悔しいねえ、こんなに血を吸って!」上官の表情までが思い出される。母は若かった。

 さて、現在の私は?敵が手強く、数分で勝敗がつかなければ、蚊取り線香を点して足下に置く。母も私も、地獄に落ちたら、蜘蛛の糸の助けは期待できない。